text:ima:s_ima036
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| text:ima:s_ima036 [2023/09/19 15:29] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | text:ima:s_ima036 [2026/02/18 11:19] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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| 鎌倉武士、入道して高野の蓮華谷に行ふありけり。 | 鎌倉武士、入道して高野の蓮華谷に行ふありけり。 | ||
| - | この者が寝(ぬ)る所にて、夜な夜な女と物語をしける音のしければ、具したりける弟子ども、おほかた心得がたくて、便宜(びんぎ)のありけるに、ある弟子、この入道に尋ねたりければ、「さることあり。我が女の鎌倉にありしが、夜な夜なこれへ来るなり。それに何事も言ひ合はせ、また、故郷(ふるさと)のことのおぼつかなさも語り、世間のこともはからひなどしてあるなり」と言ひければ、弟子、言ふはかりなく不思議に思えて、不思議((底本「不思儀」))の余りに、空阿弥陀仏((明遍))に、ありままに申しければ、空阿弥陀仏、うち案じて、「さることも覚えあり。この女、いたく恋しく思ふにより、魂などの通ふにこそ。この定ならば、臨終の妨げにもなりなむず。急ぎ祈るべきぞ」とて、祈られけり。 | + | この者が寝(ぬ)る所にて、夜な夜な女と物語をしける音のしければ、具したりける弟子ども、おほかた心得がたくて、便宜(びんぎ)のありけるに、ある弟子、この入道に尋ねたりければ、「さることあり。我が女の鎌倉にありしが、夜な夜なこれへ来るなり。それに何事も言ひ合はせ、また、故郷(ふるさと)のことのおぼつかなさも語り、世間のこともはからひなどしてあるなり」と言ひければ、弟子、言ふばかりなく不思議に思えて、不思議((底本「不思儀」))の余りに、空阿弥陀仏((明遍))に、ありままに申しければ、空阿弥陀仏、うち案じて、「さることも覚えあり。この女、いたく恋しく思ふにより、魂などの通ふにこそ。この定ならば、臨終の妨げにもなりなむず。急ぎ祈るべきぞ」とて、祈られけり。 |
| - | ある時に、「念仏にて祈てみむ」とて、蓮華谷の聖、三四十人ばかり廻り居て、この入道を中に据ゑて、念仏を責め伏せて申したるに、入道も同じく申しけるが、空阿弥陀仏の秘蔵の本尊の、帳に入りたるがおはしましける、そのかたをつくづくとまもりて、恐ろしげに思ひて、わなわなと震ひければ、空阿弥陀仏、寄りて、「など、恐しげには思ひたるぞ」と問へば、「その御本尊の御前に、かの女房が詣で来て、我を世に恨めしげに見て候ふが、など候ふらん、あまりに恐しく」と((「と」は底本「み」。諸本により訂正))申しければ、その時、空阿弥陀仏、「門門不同八万四、為滅无明果業因、利剣即是弥陀号、一声称念罪皆除」と、高く誦せられたりければ、この女の顔の、中より二つに割れて、散るやうに見えて、失せにけり。 | + | ある時に、「念仏にて祈てみむ」とて、蓮華谷の聖、三・四十人ばかり廻り居て、この入道を中に据ゑて、念仏を責め伏せて申したるに、入道も同じく申しけるが、空阿弥陀仏の秘蔵の本尊の、帳に入りたるがおはしましける、そのかたをつくづくとまもりて、恐ろしげに思ひて、わなわなと震ひければ、空阿弥陀仏、寄りて、「など、恐しげには思ひたるぞ」と問へば、「その御本尊の御前に、かの女房が詣で来て、我を世に恨めしげに見て候ふが、など候ふらん、あまりに恐しく」と((「と」は底本「み」。諸本により訂正))申しければ、その時、空阿弥陀仏、「門門不同八万四、為滅无明果業因、利剣即是弥陀号、一声称念罪皆除」と、高く誦せられたりければ、この女の顔の、中より二つに割れて、散るやうに見えて、失せにけり。 |
| これをば人は見ず、ただ入道ばかり見て、いとど恐しくて、つんつんと上(かみ)へ躍りたるが、その後はもとの心になりて、行ひにけり。念仏の力の尊きこと、いとど人々、尊びあひけり。 | これをば人は見ず、ただ入道ばかり見て、いとど恐しくて、つんつんと上(かみ)へ躍りたるが、その後はもとの心になりて、行ひにけり。念仏の力の尊きこと、いとど人々、尊びあひけり。 | ||
| 本体の女は、つやつやさることなくて、もとのやうに鎌倉にありとぞ聞こえし。天魔のしわざか、また、女の恋しと思ひけるがゆゑにか、いと不思議なり。 | 本体の女は、つやつやさることなくて、もとのやうに鎌倉にありとぞ聞こえし。天魔のしわざか、また、女の恋しと思ひけるがゆゑにか、いと不思議なり。 | ||
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| ===== 翻刻 ===== | ===== 翻刻 ===== | ||
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| 明果業因利剣即是弥陀号一声称念罪皆除とた | 明果業因利剣即是弥陀号一声称念罪皆除とた | ||
| かく誦せられたりけれはこの女のかほの中より二にわれて/s23l | かく誦せられたりけれはこの女のかほの中より二にわれて/s23l | ||
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| + | https:// | ||
| ちるやうにみえてうせにけりこれをは人はみすたた入 | ちるやうにみえてうせにけりこれをは人はみすたた入 | ||
| 行 48: | 行 54: | ||
| きこえし天魔のしわさか又女の恋しと思ひけるかゆへに | きこえし天魔のしわさか又女の恋しと思ひけるかゆへに | ||
| かいとふしきなり/s24r | かいとふしきなり/s24r | ||
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text/ima/s_ima036.1695104983.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa
