text:chomonju:s_chomonju550
古今著聞集 興言利口第二十五
550 ある所に能声をそろへて念仏を申させけり・・・
校訂本文
ある所に、能声をそろへて念仏を申させけり。聴聞(ちやうもん)の女房の中に、ある念仏者を心がけたるありけり。「いかでかな、物言ひかはさむ」と思ひけれども、人目しげくてかなはざりければ、とかくためらひて、行道(ぎやうだう)の時、ちと足をつみて、その気色(きそく)を見せて、何となく立ち上がりて、後戸(うしろど)の方にて、「ちと申さむ、えい」と言ひかけたりけるを、返事言はば人聞きとがむべかりけるほどに、念仏の音曲にまぎらかして、「南無阿弥陀仏」の「南無」を、「さもあみだ仏」と申たりける、いかに1)をかしかりけむ。
翻刻
或所に能声をそろへて念仏を申させけりちやうもん の女房の中にある念仏者を心かけたるありけりい かてかな物いひかはさむと思けれとも人めしけくて かなはさりけれはとかくためらひて行道の時ちと あしをつみてそのきそくを見せてなにとなく 立あかりてうしろとのかたにてちと申さむえいと いひかけたりけるを返事いはは人ききとかむへ かりける程に念仏の音曲にまきらかして南無阿/s436l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/436
弥陀仏の南無をさもあみた仏と申たりけるい かににくをかしかりけむ/s437r
1)
「いかに」は底本「いかににく」。諸本により訂正。
text/chomonju/s_chomonju550.txt · 最終更新: 2020/10/18 15:30 by Satoshi Nakagawa