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text:chomonju:s_chomonju441 [2020/07/08 19:26]
Satoshi Nakagawa 作成
text:chomonju:s_chomonju441 [2020/07/08 20:05] (現在)
Satoshi Nakagawa
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 力者、七条河原より帰り参るに、子の始めばかりに参り着きて、このやう申せば、「こはいかに」と、かたへは疑ひ思ひて、あさみ騒ぎ((「騒ぎ」は底本「たはき」。諸本により訂正。))などしける折に、小殿、布持ちて参りたり。上下、驚きあさむことかぎりなし。鳥の飛ぶとも、いかでかこれほど早きことは侍るべき。七条河原より帰りたる使と、ただ同じほどに走り帰りたること、恐しきことなり。人の振舞ひとも覚えず。 力者、七条河原より帰り参るに、子の始めばかりに参り着きて、このやう申せば、「こはいかに」と、かたへは疑ひ思ひて、あさみ騒ぎ((「騒ぎ」は底本「たはき」。諸本により訂正。))などしける折に、小殿、布持ちて参りたり。上下、驚きあさむことかぎりなし。鳥の飛ぶとも、いかでかこれほど早きことは侍るべき。七条河原より帰りたる使と、ただ同じほどに走り帰りたること、恐しきことなり。人の振舞ひとも覚えず。
  
-すべて山を走り水に入りて振舞へるさま、凡夫(ぼんぶ)の所為(しよゐ)にはあらざりけり。昔は八幡((石清水八幡宮。底本「八○」に「幡歟」と注。))の児にて侍りけり。篳篥(ひちりき)なと優(いう)に吹きて、世おえも侍りけるが、所領相論のことありて、叔父を殺してけり。それより八幡にも安堵(あんど)せずなりて、かかる身となりにけるとぞ((「ぞ」は底本「て」。諸本により訂正。))。徳大寺に祗候の時も篳篥つかうまつりて、内々の講演などには吹かせられけるとぞ。+すべて山を走り水に入りて振舞へるさま、凡夫(ぼんぶ)の所為(しよゐ)にはあらざりけり。昔は八幡((石清水八幡宮。底本「八○」に「幡歟」と注。))の児にて侍りけり。篳篥(ひちりき)なと優(いう)に吹きて、世おえも侍りけるが、所領相論のことありて、叔父を殺してけり。それより八幡にも安堵(あんど)せずなりて、かかる身となりにけるとぞ((「ぞ」は底本「て」。諸本により訂正。))。徳大寺に祗候の時も篳篥つかうまつりて、内々の講演などには吹かせられけるとぞ。
  
 この小殿が語りけるは、「若くより武勇をしてみるに、まさりたる者も少なく候ひけり。ただ一人ぞ候ひし。大殿と申し候ひし強盗と同宿して、山崎に候ひし時、夜の白々(しらじら)と明けわたるほどに、あやしく犬の吠え候ひしを、われは何とも思ひもとがめず候ひしを、大殿が聞きとがめて、『や、給へ、平六。この犬の吠えやうは聞きとがめ給はぬか。あやしきさまなり。出でて見給へかし』と申し候ひし時に、弓矢かきつけて、出でて見侍りしに、白き直垂に引き入れ烏帽子したる男、下人両三人具して通るあり。その前(さき)に、たけたちするたかに((意味不明。誤写があるか。))、いとすくやかげなる法師、物具(もののぐ)はせで、ただ大きなる撮棒(さいぼう)ばかり持ちたる、通り侍りぬ。 この小殿が語りけるは、「若くより武勇をしてみるに、まさりたる者も少なく候ひけり。ただ一人ぞ候ひし。大殿と申し候ひし強盗と同宿して、山崎に候ひし時、夜の白々(しらじら)と明けわたるほどに、あやしく犬の吠え候ひしを、われは何とも思ひもとがめず候ひしを、大殿が聞きとがめて、『や、給へ、平六。この犬の吠えやうは聞きとがめ給はぬか。あやしきさまなり。出でて見給へかし』と申し候ひし時に、弓矢かきつけて、出でて見侍りしに、白き直垂に引き入れ烏帽子したる男、下人両三人具して通るあり。その前(さき)に、たけたちするたかに((意味不明。誤写があるか。))、いとすくやかげなる法師、物具(もののぐ)はせで、ただ大きなる撮棒(さいぼう)ばかり持ちたる、通り侍りぬ。


text/chomonju/s_chomonju441.txt · 最終更新: 2020/07/08 20:05 by Satoshi Nakagawa