text:chomonju:s_chomonju381
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text:chomonju:s_chomonju381 [2020/05/10 21:22] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:chomonju:s_chomonju381 [2020/05/10 21:23] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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- | 近ごろ、近江国海津(かいづ)に金といふ遊女ありけり。その所の沙汰のものなりける法師の妻にて年ごろ住みけるに、件(くだん)の法師、またあらぬ君に心移して通ひけるを、金漏れ聞きて、やすからず思ひけり。 | + | 近ごろ、近江国海津(かいづ)に金といふ遊女ありけり。その所の沙汰のものなりける法師の妻にて、年ごろ住みけるに、件(くだん)の法師、またあらぬ君に心移して通ひけるを、金、漏れ聞きて、やすからず思ひけり。 |
ある夜、合宿したりけるに、法師、何心なくて、例のやうに、「かの事くはだてん」とて、股に挟まりたりけるを、その弱腰を強く挟みてけり。しばしは戯(たはぶ)れかと思ひて、「外せ外せ」と言ひければ、なほ挟みつめて、「わ法師めが、人あなづりして、人こそあらめ、おもてを並べたる者に心移して、ねたき目見するに、もの習はかさん」と言ひて、ただ締めに締めまさりければ、すでに泡を吹きて死なんとしけり。その時外しぬ。法師は、くたくたと絶え入りて、わづかに息ばかりぞかよひける。水吹きなどして、一時ばかりありて生きあがりにけり。 | ある夜、合宿したりけるに、法師、何心なくて、例のやうに、「かの事くはだてん」とて、股に挟まりたりけるを、その弱腰を強く挟みてけり。しばしは戯(たはぶ)れかと思ひて、「外せ外せ」と言ひければ、なほ挟みつめて、「わ法師めが、人あなづりして、人こそあらめ、おもてを並べたる者に心移して、ねたき目見するに、もの習はかさん」と言ひて、ただ締めに締めまさりければ、すでに泡を吹きて死なんとしけり。その時外しぬ。法師は、くたくたと絶え入りて、わづかに息ばかりぞかよひける。水吹きなどして、一時ばかりありて生きあがりにけり。 |
text/chomonju/s_chomonju381.1589113361.txt.gz · 最終更新: 2020/05/10 21:22 by Satoshi Nakagawa