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text:chomonju:s_chomonju252

古今著聞集 管絃歌舞第七

252 後三条院は管絃をば御沙汰なかりけり・・・

校訂本文

後三条院1)は、管絃をば御沙汰なかりけり。さりながら、中御門大納言(宗俊)2)の箏を聞こし召しては、「この卿が箏はただものにはあらず。道において上(うへ)なきものなり」とて、御顔色も変じましまして、御感ありけり。

白河院3)もこの人の箏を聞こし召しては、御落涙ありて、感ぜさせ給ひけり。按察大納言(宗季)4)に仰せられけるは、「われ、宗俊が箏を聞きて、多く罪障を滅するに、非管絃者は嗚呼(をこ)の思(おぼ)えとるべきなり」とぞ御叡感ありける。さて、ことに御憐愍ありけり。

知足院殿5)は、かの卿参られければ、いかなる奏事ありけれども、聞こし召されず、御箏沙汰ありて、毎度に興に入らせ給ひけり。

翻刻

後三条院は管絃をは御さたなかりけりさりなから中御
門大納言(宗俊)の箏をきこしめしては此卿か箏はたた/s167r
物にはあらす道においてうへなき物なりとて御顔色も
変しましまして御感ありけり白川院も此人の箏
をきこしめしては御落涙ありて感せさせ給けり按察
大納言(宗季)に仰られけるは我宗俊か箏をききておほく滅
罪障に非管絃者嗚呼のおほえとるへきなりとそ御
叡感ありけるさてことに御憐愍ありけり知足院殿
は彼卿まいられけれはいかなる奏事ありけれともきこし
めされす御箏さたありて毎度に興に入らせ給けり/s167l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/167

1)
後三条天皇
2)
藤原宗俊
3)
白河天皇
4)
藤原実季。底本注記は誤りとみられる。
5)
藤原忠実
text/chomonju/s_chomonju252.txt · 最終更新: 2020/03/29 21:14 by Satoshi Nakagawa