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text:mumyosho:u_mumyosho015

無名抄

第15話 歌風情相似忠胤説法事

校訂本文

歌風情相似忠胤説法事

祐盛法師いはく、「妙荘厳王の二子の神変を釈1)するに、『大身を現ずれば虚空に満ち、小身を現ずれば芥子に入る』などは世の常のことなるを、かの忠胤の説法に、『大身を現ずれば虚空に狭(せ)ばたがり、小身を現ずれば芥子の中に所あり』と言へりけるが、いみじき和歌の風情にて侍るなり。歌はかやうに心得て、古事(ふること)に色を添へつつ、めづらしくとりなすべきなり。さのみ新しき色2)はいかがあり、あへて詠まれん」となん語り侍りし。

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哥風情相似忠胤説法事
祐盛法師云妙荘厳王の二子の神変を尺するに/e16l
大身を現すれは虚空にみち小身を現すれは芥子
にいるなとは世のつねのことなるをかの忠胤の説法に
大身を現すれは虚空にせはたかり小身を現すれは
芥子の中に所ありといへりけるかいみしき和哥の
風情にて侍なり哥はかやうに心えてふることに色
をそへつつめつらしくとりなすへきなりさのみあた
らしきいこはいかかありあへてよまれんとなんかたり
侍し/e17r
1)
底本「尺」
2)
底本「いこ」
text/mumyosho/u_mumyosho015.txt · 最終更新: 2014/09/13 18:15 by Satoshi Nakagawa