信智の徳の事
古徳の云はく1)、「信(しん)は道の源(みなもと)、功徳の母、智は出世解脱の良因(らういん)なり。出家は必ずこの二つを宗とす。云々」。華厳2)の説なり。経に信の徳、広く説けり。論3)に云はく、「仏法の大海は智をもつて渡る」。されば、古人の云はく、「信ありて智なきは無明を増す。智ありて信なきは邪見に落つ(取意)」。信智もつとも欠すべからず。世間の浅きことより、仏道の深き位(くらゐ)まで、もつぱら信をもつて宗とするものなり。孝経に、「至徳(しいとく)・要道(えうだう)を知るに、惣じては道と云ふ、分かつては仁義礼智信と云ふ。一人これを用ゆれども、余りありと云ふことなし。天下これを行へども、足らずと云ふことなし。少しき取る時は少しき福を得、大きに取る時は大きに福を得る」と云へるがごとく、仏法の中の信も、浅く信ずれば浅き益(やく)を得、深く信ずれは深き益あり。
北野の天神4)は観音の垂迹(すいじやく)なり。信(まこと)の大臣(だいじん)5)と云へり。一文字(もんじ)の名なり。よしあるらむかし。
密宗の信に二つあり。深信(じんしん)・解信(げしん)なり。両部の機(き)なり。解信は智門により、深信は理門なり。ただ仰(あふ)いで深く信ず。凡情の及ばざるの処の仏語を信じて疑ひ無き、これ宿因なり。ただし、深信も一向智用(ちゆう)無きは、邪見に落つることあるべし。徳を信じ、たちまち障(さはり)を知るべし。
洛陽にゆかりたる女房侍りし。貴所に宮仕ひ6)せしかども、先世の果報か、貧しく侍りしが、常に長谷寺に参じて祈念しけるに、感応(かんのう)なくして、わが信の薄きか、障りの厚きか、これを知らざるなり。
「神力に勝たず」と云ひて、昔、舎利弗(しやりほつ)の弟子、利軍支比丘(りぐんしびく)、貧窮(びんぐう)の報ひ厚くして、食(じき)を送るに、路(みち)にて失せけり。「目連(もくれん)の神通なほ及ばず」と云へり。
南山大師7)、天に問うて云はく、「諸天神通あり。悪行の者を調伏(てうぶく)し制止すべし。など、思ふさまに悪業を行ぜしむる」と。答へて云はく、「仏の神通なほ及ばず。われらいかがせむ」と。まことに神通をもて、おして救ふべくは、六趣の衆生、誰か捨て給ふべき。一時に済度(さいど)すべし。以て知(しん)ぬ、業道壊(やぶ)るべからず。
南都に、昔、学生の同法(どうぼふ)なるありけり。一人逐電(ちくでん)して多年、ある時、鰯(いわし)売る俗、路(みち)にて会ひたり。昔の同法に似たり。よくよく見れば彼なり。「いかに某(なにがし)の房と見奉る。この姿こそ存(ぞん)の外(ほか)なれ」と云ひける返事に、「業力如金剛(ごふりきによこんがう)」と答へけり。学生(がくしやう)にて文(もん)を引ける。かかるべき業力の壊(やぶ)るべからざるのよしを答へけるなるべし。
業道わきまへざる人は、よしなく仏神を恨み、わが身の障り、業の分斉(ぶんざい)を知らざるなり。かの女房、この心なくして長谷の観音を妄語袋(そらごとぶくろ)と名付く。さしも人の願満てむと誓願給へるに、むなしきと云ふよしなり。
昔、信ある俗、常に長谷寺に参じける功むなしからすして、示現(じげん)に、「何にても路に見えむ物を取りて持て」と示し給ひけり。
さて、下向する路に、藁しべのあるを、虻(あぶ)の見えけるをくくりて持ち遊びけり。京(きやう)より尋常なる若君のおはしけるが、乞ひ給ひければ奉りけり。悦びに柑子(かうじ)を一包み給はりたりけり。
京より尋常げなる女房たちの、歩行(かち)にて長谷へ参られけるに、柑子を進じたりければ、悦びて、汗に濡れたる帷(かたびら)を脱ぎて給ひてけり。
大番衆(おほばんしゆう)の大名げなるが、七大寺詣でしける引き馬の稲荷の辺(へん)にて、にはかに病みて臥しまろびて、半死半生なるを、舎人(とねり)に預けて、主(あるじ)は行きにけり。舎人に申しける、「この馬はすでに死にかかりて候ふ。『もし百千に一つも、ものの不思議に助かることや』と思ひ候ふ。この帷を進(まゐ)りて、給はり候なむや」と云ふに、子細に及ばず取らせて行きけり。しばらく息出でて、身震ひしけり。
悦びて、うち乗つて行くほどに、法性寺の辺に、太宰の大弐の筑紫へ下りけるが見て、「この馬は売り馬か」と問ひて、買ふべきよし云ひて、直(あたひ)を問ふに、「心も及ばず。いかめしき馬なりければ、これほどの馬には直は定めがたく候ふ。御はからひ候ひて召され候へ」と云へば、「ただ今用途(よつと)はなし。鳥羽代(とばだい)を二町四ヶ年の間取らすべし。かつは留守して待て」と云ひければ、子細に及ばず四ヶ年待ち立ちて、留守し畳刺(たたみさし)など用意して、一任過ぎて上洛(しやうらく)したりけるに、「いみじき者なり」とて、後見(こうけん・うしろみ)して楽しかりけり。
これ信心のゆゑなり。いかが8)妄語袋(そらごとぶくろ)と申さむや。邪見の心、ことわりなり。
古き物語、人ごとに知ることなれども、ことのついでに書き付け侍る。昔、さるべき人の末ながら、貧しき姫君おはしけり。乳母(めのと)具して、鞍馬に常に参籠(さんろう)して祈念しけり。十四・五ばかりなるが、見目・姿(かたち)すぐれて美しかりけるを、房主(ばうず)の老僧心をかけて、「いかんして近付かん」と案じて、事々(ことごと)しき装束し、紫の帽子着(き)、金の杖つきて、戸帳(とちやう)の内より出でて、乳母も姫君も寝入りたりけるを、「やや」とおどろかして、いかなる天(あま)逆さまのことなりとも、房主の言はむこと違へずは、姫君めでたく栄え給ふべし」と云ひて、戸帳の内へ入りけり。
乳母、悦(よろこ)うで、やがて房へ帰るに、老僧は先に帰りて待ちけり。乳母、房主に、夢だにもめでたきことにて侍るままに、目(ま)のあたり、かかる示現かうむりたるよし、語りければ、「めでたき御事にこそ」と笑み上げて見えけり。さて、申けるは、「『かかる心、今はあるべくも侍らぬ身に、天王の御はからひにて、姫君の御果報めでたくあるべき御事にや』と思はれ侍るままに、心に存するやう申し候ふ。姫君を時々通はし参らせさせ給ひ候へかし。近付き参らせたき心候ふ」と云へば、乳母、「思ひがけぬこと」と思ひながら、姫君にこのよし云ふに、「あら心憂や」とて、思ひ寄らぬ心地なるを、「年久しく参籠し、目のあたり天王の御告げあることなれば、やうこそ候ふらめ。御身を捨てさせ給ふと思し召して、一夜にても、かの心を背かせ給ふべからず」と泣く泣く口説きければ、「何とも、まま9)がはからひ」と云へば、悦びて日とりなどして、迎へにやるべき約束しけり。
房主悦びて、「輿車(こしくるま)は隠便(をんびん)ならず」と思ひ、大きなる唐櫃(たうびつ)をたづねて、「京に仏のおはします。迎へ参らする」よしにて、隣房(りんばう)の法師ばら雇ひて、飯酒(いひさけ)よくよくもてなして、京へやりけり。輿車ならむだにも、よしなく覚ゆるに、入る物さへ心憂く覚えて、泣き臥し給ひたりけるを、乳母、とかくすかしこしらえて、出だしたてて、唐櫃に入れて、封付けて、かかせて行きけるが、夏のことにて、世間暑かりけるままに、唐櫃をば大道(だいだう)にうち置いて、賀茂川にて水浴(あ)みけるほどに、時の摂政殿の御子、二位の中将殿とかや申しける、済々として賀茂へ参じて下向し給ひけるが、「この唐櫃、開けてみよ」と仰せられて、開き見れば、まことに美しき姫君なり。「あらうれし。これは賀茂の御利生(りしやう)にこそ」とて、車にうち乗せ下向し給ひけり。
さて、「何にても入れよ」と仰せられければ、中間(ちゆうげん)・雑色(ざふしき)ども走り回りて見るに、二歳ばかりなる犢(こうし)の見えけるを捕らへてへし入れて、封付けてけり。法師原これを知らず、持ち上げてみれば、ことのほかに重かりけれども、かかることとは思ひ寄らず、「力がなくなりて重きにや」と云ひける。
さて、鞍馬へ帰りて、「御仏、入らせ給へり」と云ひければ、房主悦びて、法師ばらまたよくよくもてなして、弟子どもをも、「御房たち、隣房へ行きて遊べ。仏の御前にて、心静かに行ずべきことなり」とて、すかしやりて、かきかね10)かけまはして、唐櫃を開けて見れば、犢(こうし)、走り出でて、屎(くそ)ひりちらし、障子みな踏み破(やぶ)りて、散々のことなりけり。
乳母・姫君は信心深くして、めでたくさいはいて、一期(いちご)富み栄えへける。房主、まことに虚妄罸(こまうばつ)二世不得(にせふとく)なりけむ。仏神感応は、ただ一世ばかりならず。当来(たうらい)も御助けありけん。信心の徳、誰かいるがせに思はむや。
雑談集巻之第五 於尾州山田ノ庄長母寺ニ草シ了ンヌ 沙門無住(七十/九歳) 信智之徳事 古徳ノ云ク信ハ道ノ源功徳ノ母智ハ出世解脱ノ之良因也出家ハ必ス 此ノ二ヲ為宗ト云々華厳ノ説也経ニ信ノ徳広ク説ケリ論ニ云仏 法ノ大海ハ以テ智ヲ渡ルサレハ古人ノ云有テ信無ハ智増ス無明有智無ハ 信落ツ邪見(取意)信智尤不可闕ス世間ノ浅キ事ヨリ仏道ノ 深キ位マテ専ラ以テ信ヲ為スル宗者ノ也孝経ニ至徳要道ヲ知ルニ惣シテハ 道ト云分ツテハ仁義礼智信ト云フ一人コレヲ用ユレトモ有ト餘リ云フ 事ナシ天下行ヘトモ之ヲ不ト足云事ナシ少シキ取ル時ハ少シキ福ヲ得 大ニ取ル時ハ大ニ福ヲ得ルト云ヘルカ如ク仏法ノ中ノ信モ浅ク信スレハ 浅キ益ヲ得深ク信スレハ深キ益アリ北野ノ天神ハ観音ノ垂迹也/3-3l
https://dl.ndl.go.jp/pid/13386679/1/2
信ノ大臣ト云ヘリ一文字ノ名也ヨシアルラムカシ密宗ノ信ニ有二ツ深 信解信也両部ノ機也解信ハ智門ニヨリ深信ハ理門ナリ只仰テ 深ク信ス凡情ノ不ル及之処ノ仏語ヲ信シテ無キ疑是宿因也但シ 深信モ一向智用無キハ邪見ニ落ツル事アルヘシ徳ヲ信シ忽障ヲ 知ルヘシ洛陽ニユカリタル女房侍シ貴所ニ官仕ヒセシカトモ先世ノ 果報カマヅシク侍シカ常ニ長谷寺ニ参シテ祈念シケルニ感応ナク シテ我カ信ノ薄キ歟障ノ厚キ歟コレヲシラサルナリ神力ニ勝スト云テ 昔舎利弗ノ弟子利軍支比丘貧窮ノ報厚クシテ食ヲ送ルニ 路ニテ失ケリ目連ノ神通猶不及ハト云ヘリ南山大師天ニ問フテ云ハク 諸天神通有リ悪行ノ者ノヲ調伏シ制止スヘシナト思フサマニ悪 業ヲ行セシムルト答ヘテ云仏ノ神通猶ヲ不及ハ我等如何カセムト マコトニ神通ヲモテヲシテ可クハ救フ六趣ノ衆生誰カ可捨テ給フ一時ニ/3-4r
可シ済度ス以テ知ヌ業道不可壊ル南都ニ昔シ学生ノ同法ナル 有リケリ一人逐電シテ多年或時鰯売ル俗路ニテアヒタリ昔ノ 同法ニ似タリヨクヨク見レハ彼也イカニ某房ト見タテマツルコノ スカタコソ存ノ外ナレト云ケル返事ニ業力如金剛ト答ヘケリ 学生ニテ文ヲ引ケルカカルヘキ業力ノ不可壊之由ヲ答ケルナルヘシ 業道ワキマヘサル人ハヨシナク仏神ヲ恨ミ我身ノ障リ業ノ 分斉ヲシラサルナリ彼ノ女房コノ心ナクシテ長谷ノ観音ヲ妄 語袋トナツクサシモ人ノ願満テムト誓願給ヘルニムナシキト云 ヨシナリ ○昔シ信アル俗常ニ長谷寺ニ参シケル功ムナシ カラスシテ示現ニナニニテモ路ニミエム物ヲ取テモテト示シ給ヒケリ サテ下向スル路ニハラシヘノアルヲ虻ノミエケルヲククリテモチ アソビケリ京ヨリ尋常ナル若君ノヲワシケルカコヒ給ケレハタテ/3-4l
https://dl.ndl.go.jp/pid/13386679/1/4
マツリケリ悦ニ柑子ヲ一ツツミ給ハリタリケリ京ヨリ尋常ケナル 女房タチノ歩行ニテ長谷ヘ参ラレケルニ柑子ヲ進シタリ ケレハ悦テ汗ニヌレタル帷ヲヌキテ給テケリ大番衆ノ大名ケナルカ 七大寺詣デシケル引馬ノ稲荷ノ辺ニテ俄ニ病テ臥マロビテ 半死半生ナルヲ舎人ニアツケテ主ハ行ニケリ舎人ニ申ケル此ノ 馬ハ已ニ死ニカカリテ候モシ百千ニ一ツモ物ノ不思議ニタスカル事 ヤト思ヒ候コノ帷ヲ進テ給ハリ候ナムヤト云ニ子細ニ不及トラ セテ行ケリシハラクイキイテテ身フルヒシケリ悦テウチ乗テ 行ク程ニ法性寺ノ辺ニ太宰ノ大弐ノ筑紫ヘ下リケルカミテ此ノ馬ハ 売馬カト問テ買ベキヨシ云テ直ヲ問ニ心モ不及バイカメシキ 馬ナリケレハコレ程ノ馬ニハ直ハ定メカタク候御計候テ被レ召サ 候ヘト云ヘハ只今用途ハナシ鳥羽代ヲ二町四ヶ年ノ間トラス/3-5r
ヘシ且ハ留守シテ待ト云ケレハ子細ニ不及ハ四ヶ年待立テ留守シ 畳サシナト用意シテ一任スキテ上洛シタリケルニイミシキ物 也トテ後見シテタノシカリケリコレ信心ノ故ヘ也如何カソラゴト フクロト申サムヤ邪見ノ心コトハリナリ ○フルキ物語 人ゴトニシル事ナレトモ事ノ次ニ書付ケ侍ル昔シサルベキ人ノ スエナカラマツシキ姫君ヲハシケリ乳母倶シテ鞍馬ニ常ニ参 籠シテ祈念シケリ十四五ハカリナルカミメカタチ勝テウツ クシカリケルヲ房主ノ老僧心ヲカケテ如何シテ近付ント案シテ 事々シキ装束シ紫ノ帽子キ金ノ杖ツキテ戸帳ノ内ヨリイテテ 乳母モ姫君モネイリタリケルヲヤヤトヲトロカシテイカナル アマサカサマノ事ナリトモ房主ノイハム事タガヘスハ姫君メテ タクサカヘ給ヘシト云テ戸帳ノ内ヘ入リケリ乳母悦テヤカテ/3-5l
https://dl.ndl.go.jp/pid/13386679/1/5
房ヘカエルニ老僧ハサキニ帰リテ待ケリ乳母房主ニ夢タニモ メテタキコトニテ侍ルママニマノアタリカカル示現カフムリタルヨシ 語リケレハメテタキ御事ニコソトエミアケテミエケリサテ申 ケルハカカル心イマハアルヘクモ侍ラヌ身ニ天王ノ御計ニテ 姫君ノ御果報目出アルヘキ御事ニヤト思ハレ侍ルママニ心ニ 存スル様申候姫君ヲ時々カヨハシマイラセサセ給ヒ候ヘカシ 近付マイラセタキ心候トイエハ乳母ヲモイカケヌ事トヲモイ ナカラ姫君ニ此ノ由云ニアラ心ウヤトテ思ヨラヌ心地ナルヲ年 久ク参籠シマノアタリ天王ノ御ツケアル事ナレハ様コソ候ラメ 御身ヲステサセ給トヲホシメシテ一夜ニテモカノ心ヲソムカセ給フ ヘカラストナクナククトキケレハナニトモママガハカラヒトイエハ悦テ 日トリナトシテ迎ニヤルヘキ約束シケリ房主悦テ輿車ハ隠/3-6r
便ナラスト思ヒ大ナル唐櫃ヲタツネテ京ニ仏ノヲハシマスムカヘ マイラスルヨシニテ隣房ノ法師原ヤトヒテ飯酒ヨクヨクモテ ナシテ京ヘヤリケリコシクルマナラムタニモヨシナクヲホユルニ入 物サヘ心ウクヲホエテナキ臥給タリケルヲ乳母トカクスカシ コシラエテイダシタテテ唐櫃ニ入テ封ツケテカカセテユキケルカ 夏ノ事ニテ世間アツカリケルママニ唐櫃ヲハ大道ニ打置テ 賀茂河ニテ水アミケルホトニ時ノ摂政殿ノ御子二位ノ中将 殿トカヤ申ケル済々トシテ賀茂ヘ参シテ下向シ給ケルカ此ノ唐櫃開テ ミヨト被テ仰セ開キミレハ実ニウツクシキ姫君ナリアラウレシコレハ 賀茂ノ御利生ニコソトテ車ニウチノセ下向シ給ケリサテ ナニニテモ入ヨト被レ仰セケレハ中間雑色トモハシリマハリテミルニ 二歳ハカリナル犢ノミエケルヲトラエテヘシ入テ封付テケリ/3-6l
https://dl.ndl.go.jp/pid/13386679/1/6
法師原コレヲシラスモチアケテミレハコトノホカニヲモカリケレトモ カカル事トハ思不寄ラチカラガナクナリテヲモキニヤト云ケルサテ 鞍馬ヘ帰テ御仏イラセ給ヘリト云ケレハ房主悦テ法師原 又ヨクヨクモテナシテ弟子トモヲモ御房タチ隣房ヘユキテアソヘ 仏ノ御前ニテ心静ニ行スヘキコトナリトテスカシヤリテカキカネ カケマハシテ唐櫃ヲ開テミレハ犢走出テ屎ヒリチラシ障子 皆フミヤフリテ散々ノ事ナリケリ乳母姫君ハ信心フカクシテ 目出クサイハイテ一期トミサカヘケル房主マコトニ虚妄罸二 世不得ナリケム仏神感応ハ只一世ハカリナラス当来モ御 タスケアリケン信心ノ徳誰カイルカセニ思ハムヤ/3-7r