世継物語
今は昔、円融院失せさせ給ひて、紫野の方にて御葬送ありけり。一年(とせ)子日のおりなど思ひ出で給ひて、閑院の大将、
紫の雲のかけても思ひきや春の霞になしてみむとは
行成の少将
おかれじと1)常の御幸は急ぎしを煙にそはぬ旅ぞ悲しき
今は昔円融院うせさせ給ひて紫野の方にて御さう そうありけり一とせ子日のおりなと思ひ出給て閑院 の大将 紫の雲のかけても思ひきやた春の霞になしてみむとは ゆきなりの少将 をかれしとつねの御幸は急しを煙にそはぬたひそ悲しき/21ウ