大和物語
ならの御門1)、位におはしましける時、嵯峨の御門2)は坊におはしまして、詠みて奉り給ひける。
みな人のその香に3)めづる藤袴(ふぢばかま)君のみためと手折(たお)りたる今日
御門の御返事、
折る人の心のままに藤袴むべ色深く匂ひたりけり
平城天皇 大同天子 ならのみかとくらひにおはしまし けるときさかのみかと(弘仁)は坊におは しましてよみてたてまつり給ける みな人のそのかみめつるふち はかまきみのみためとたをりたるけふ 御かとの御返事 をる人のこころのままにふちはか まむへいろふかくにほひたりけり/d54r