大和物語
南院の今君といふは、右京の大夫(かみ)宗于1)の君のむすめなり。それ、太政大臣(おほきおとど)2)の内侍の督(かん)の君3)の御方にさぶらひけり。それを、兵衛の督の君4)、あや君と聞こえける時、曹司にしばしばおはしけり。
おはし絶えにければ、常夏5)の枯れたるに付けて、かくなん、
かりそめに君がふしみし常夏のねもかれにしをいかで咲きけん
となんありける6)。
南院のいまきみといふはう京のかみ むねゆきのきみのむすめなりそれ おほきおととのないしのかみ(かん歟)のきみの 御かたにさふらひけりそれをひやう ゑのかみ(ん)のきみあやきみ(師平公)ときこえける ときさうしにしはしはおはしけりおは したえにけれはとこなつのかれた るにつけてかくなん かりそめにきみかふしみしとこな つのねもかれにしをいかてさきけん/d10r
となんありけり/d10l