大和物語
同じ右の大臣(おとど)の御息所1)、御門おはしまさずなりてのち、式部卿敦実2)なんど住み奉り給ひけるを、いかがありけん、おはしまさざりけるころ、斎宮の御もとより、御文(おんふみ)奉り給ひけるに、御息所の、宮おはしまさぬことなど、聞こえ給ひて、奥に、
白山(しらやま)に降りにし雪の跡絶えて今日はこしぢの人も通はず
となんありける。
御返りあれど、本に、「なし」とあり。
おなし右のおととのみやす所みかと おはしまさすなりてのち式部卿敦実 なんとすみたてまつりたまひけるを いかかありけんおはしまささりけるころ さい宮の御もとより御ふみたてまつ り給けるに宮す所のみやおはしま さぬことなときこえ給てをくに/d47l
しらやまにふりにしゆきのあ とたえてけふはこしちの人もかよはす となんありける御かへりあれと 本になしとあり/d48r