大和物語
故式部卿宮1)失せ給ひける時は、二月(きさらぎ)のつごもり、花の盛りになんありける。
堤の中納言2)の詠み給ひける。
咲きにほひ風待つほどの山桜人の世よりは久しかりけり
三条の右の大臣(おとど)3)の御返し、
春々の花は散るとも咲きぬべしまた逢ひがたき人の世ぞ憂き
故式部卿宮うせ給けるときはきさらき のつこもり花のさかりになんありけるつ つみの中納言のよみ給ける さきにほひかせまつほとのやまさく らひとのよよりはひさしかりけり 三条の右のおととの御かへし はるはるの花はちるともさきぬへし 又あひかたき人のよそうき/d36l