大和物語
また、とし子、雨の降りける夜、千兼を待ちけり。雨にや障(さは)りけん、来ざりけり。
壊(こぼ)れたる家にて、いといたく漏りけり。
「雨のいたく降りしかば、え参らずなりにけり。さる所に、いかでかものし給ふ」と言へりければ、とし子、
君を思ふひまなき宿と思へども今宵の雨は漏らぬ間ぞなき
又としこあめのふりけるよちか ぬをまちけりあめにやさはりけん こさりけりこほれたるいへにていと いたくもりけりあめのいたくふり しかはえまいらすなりにけりさる 所にいかてかものし給といえりけれは としこ きみをおもふひまなきやととおもへ ともこよひのあめはもらぬまそなき/d34r