大和物語
同じ人1)に、ある人、「山へ登り給ふべき日は、まだ遠くやある。いつぞ」と言へりければ、
のぼり行く山の雲井の遠ければ日も近くなるものにぞありける
とぞ、言ひおこせたりける。
かくのみ、良からぬことの、あるが上に出で来ければ、
のがるとも誰(たれ)か着ざらん濡れ衣はあめの下にも住まんかぎりは
と言ひけり。
をなしひとにある人やまえのほり給へき 日はまたとをくやあるいつそといへりけれは/d23l
のほりゆくやまの雲ゐのとをけ れは日もちかくなるものにそありける とそいひをこせたりけるかくのみ よからぬことのあるかうへにいてきけれは のかるともたれかきさらんぬれき ぬはあめのしたにもすまんかきりは といひけり/d24r