大和物語
堤の中納言1)、内裏(うち)の御使(つかひ)にて、大内山(おほうちやま)に院の御門おはしますに、参り給へり。もの心細げにておはします。いとあはれなり。
高き所なれば、雲は下(しも)より、いと多く立ちのぼるやうにて見えければ、かくなん、
白雲(しらくも)の九重(ここの)へに立つ峰なれば大内山といふにぞありける
つつみの中納言うちの御つかひにておほ うちやまに院のみかとおはしますに まいりたまえりものこころほそけに ておはしますいとあはれなりたかき所 なれは雲はしもよりいとおほくたち のほるやうにてみえけれはかくなん しら雲のここのへにたつみねなれ はおほうちやまといふにそありける/d20r