大和物語
朝忠の中将1)の、人の妻(め)にてありける人に、忍びて会ひ渡りけるを、女も思ひかはして住みけるほどに、かの男2)、人の国の守になりて下りければ、これもかれも、「いとあはれ」と思ひけり。
さて、詠みてやりたる。
たぐへやるわが魂(たましひ)をいかにしてはかなき空にもて離るらん
となむ、下りける日、言ひやりける。
あさたたの中将の人のめにてありける人に しのひてあひわたりけるを女もおもひ かはしてすみけるほとにかの男人のく/d8r
にのかみになりてくたりけれはこれもか れもいとあはれとおもひけりさてよみて やりたる たくえやる我たましひをいかにして はかなきそらにもてはなるらん となむくたりける日いひやりける男/d8l