徒然草
陰陽師有宗入道1)、鎌倉より上りて、尋ね詣で来たりしが、まづさし入りて、「この庭のいたづらに広きこと、あさましく、あるべからぬことなり。道を知る者は、植うることをつとむ。細道一つ残して、みな畑に作り給へ」と、いさめ侍りき。
まことに少しの地をもいたづらに置かんことは、益(やく)なきことなり。食ふ物・薬種(やくしゆ)などを植え置くべし。
陰陽師有宗入道。鎌倉よりのぼり て。尋まうで来りしが。まづさし入て。/k2-62r
此庭のいたづらにひろきこと。浅まし く有べからぬ事也。道をしるものは うふることをつとむ。ほそ道ひとつ残 して。皆はたけにつくり給へ。といさめ侍り き。誠に少しの地をも。いたづらにをかん ことは。益なき事なり。くふ物。薬種 などをうへをくべし/k2-62l
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0002/he10_00934_0002_p0062.jpg