とはずがたり
新院1)・本院2)、御花合(はなあはせ)の勝負といふことありて、知らぬ山の奥まで尋ね求めなど、この春は暇(いとま)惜しきほどなれば、うちかくろへたる忍びごと3)どももかなはで、おぼつかなさをのみ書き尽す。今年は御所にのみつと候ひて、秋にもなりぬ。
もかへりぬ新院本院御はなあわせのせうふといふ事あり てしらぬ山のおくまてたつねもとめなとこの春はいとま おしきほとなれはうちかくろへたるしのひ事とももかなはて おほつかなさをのみかきつくすことしは御所にのみつと候て秋 にも成ぬなか月の中の十日あまりにやせむせう寺の大納言/s82r k2-34