里に出でて、まれのひまのありしに、わりなくして立ち入りたりしこそ、なかなかなりしか。人静まりて後なれば、ほどなく明けて、帰る名残りの惜しさ、心もまとひつつ、その梢(こずゑ)の隠るるまでにかへりみつつ過ぎ行く道すがら、鳥の鳴きしかば、
恨めしやいつしか鳥の鳴きぬらんいとふは今宵一夜(ひとよ)ばかりを
さとにいててまれのひまの ありしにわりなくして たちいりたりしこそ なかなかなりしか人しつ まりてのちなれはほとなく あけてかへるなこりのおしさ 心もまとひつつそのこすゑ のかくるるまてにかへりみ つつすき行みちすから とりのなきしかは/s27r
うらめしやいつしかとりのなきぬらん いとふはこよひひとよはかりを/s27l