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隆房集

56 恨めしやいつしか鳥の鳴きぬらんいとふは今宵一夜ばかりを

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里に出でて、まれのひまのありしに、わりなくして立ち入りたりしこそ、なかなかなりしか。人静まりて後なれば、ほどなく明けて、帰る名残りの惜しさ、心もまとひつつ、その梢(こずゑ)の隠るるまでにかへりみつつ過ぎ行く道すがら、鳥の鳴きしかば、

  恨めしやいつしか鳥の鳴きぬらんいとふは今宵一夜(ひとよ)ばかりを

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翻刻

 さとにいててまれのひまの
 ありしにわりなくして
 たちいりたりしこそ
 なかなかなりしか人しつ
 まりてのちなれはほとなく
 あけてかへるなこりのおしさ
 心もまとひつつそのこすゑ
 のかくるるまてにかへりみ
 つつすき行みちすから
 とりのなきしかは/s27r
うらめしやいつしかとりのなきぬらん
いとふはこよひひとよはかりを/s27l

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/27?ln=ja