醒睡笑 巻8 祝ひすました
江州堅田(かただ)といふ所の地頭へ、毎年大晦日に、浦の百姓、必ず鮒を二つづつあぐる例あり。
ある時、一つあぐる。主人、気色変はり腹立(ふくりう)するに、元日、膳を出す折、女房したためて持ち出で、「今年はなほもふなをり1)せん」と言ふまま、彼鮒の胴骨を二つに折りて参らせけり。
一 江州かたたといふ処の地頭へ毎年大晦日 に浦の百姓かならすふなを二つつつあくる 例あり或時一つあくる主人気色かはり 腹立するに元日膳を出す折女房したため て持出今年は猶もふなをりせんと云まま 彼鮒のとうほねを二つに折て参らせけり/n8-67l