醒睡笑 巻7 舞
烏帽子折を舞ふとて、「山路殿(さんろどの)が吹く物の名をば、何と言ふやらん。名をば何と言ふやらむ」と、繰り返しに返し舞へども、つひに横笛出でず。人みな笑止に思ひ、向かうより扇を横たへ、ゆびを押しつ上げつ、笛吹くまねをし教へければ、ちくちくうなづき、合点(がつてん)したる顔にて、あげくに、「ちやるるらと申し候(さう)」と。
一 烏帽子折をまふとて山路(さんろ)殿が吹物の名を はなにといふやらん名をばなにといふやらむ とくり返しに返しまへどもつゐに横(よこ) 笛(ふえ)いでず人みな笑止(しやうし)におもひむかふより扇 をよこたへゆびををしつあけつ笛吹(ふえふく)まね/n7-53r
をしをしへけれはちくちくうなづきがつてん したるかほにてあけくにちやるるらと 申さうと/n7-53l