醒睡笑 巻6 詮ない秘密
わが身を謙(へりくだ)り、何はにつけ卑下する人、ある時、馬の庭乗りしけるに、「太く、たくましく、足きいて」など、人みな讃めければ1)、「いや、おのおの御覧ぜらるる片腹は肥えて候へども、御目の参らぬ陰の片腹は、一円痩せて2)候ふ」と。
曽我の十郎の馬なりと、片身境(さか)うては痩せまいの。
一 我身を謙なにはにつけ卑下する人ある 時馬の庭乗しけるにふとくたくましく足 きいてなと人みなほめをれはいやをのをの御 覧せらるるかた腹は肥て候へとも御目のま いらぬかげのかた腹は一円やけて候と 曽我の十郎の馬なりと片身さかふてはやせまいの/n6-40l