醒睡笑 巻6 恋のみち
東(あづま)にて、都の若き商人と、その宿なる中居の女房にあひ馴れ、このごろむつまじくたはぶれ、男、三味線1)を弾き2)おもしろく興ぜしも、ほどなう帰るころになりぬ。
女、やるかたなく名残を惜しむあはれさに、「何をがな」とて、一しゆの三味線をつかはし、立ち別れんとするに、女、
形見とて緒付け板をばさつくれて今朝行くべいか味気なの身や
一 東にて都のわかき商人と其宿なる中居 の女房に相馴此比むつましくたはふれ男 紗微線をひさおもしろく興せしもほとな ふかへる比になりぬ女やるかたなく名残を惜 あはれさになにをかなとて一しゆのしやみせんを/n6-33l
つかはし立わかれんとするに女 かたみとて緒つけ板をはさつくれて けさいくへいかあちきなの身や/n6-34r