醒睡笑 巻4 唯あり
一人は、「ともかくも世を過ぐしかねず」、一人は、「手前衰へたる」と、旧友両人出で合ひ、貧(ひん)なる身の、しみじみ1)と、とぼしき物語にて、立ちたるあとより、
有る時は有るにまかせて過ぎてゆけまた無き時は無きにまかせて
と読みて送りし返事に、
有る時は有るにまかせて過ぎしかどまた無き時はえこそまかせね
わが世諦2)あがる雲雀(ひばり)のごとくにてさがることこそ矢より早けれ
一 一人は兎も角も世を過かねす一人は手前 おとろへたると旧友両人出合貧(ひん)なる身の しはしはととほしき物語にて立たる跡より ある時はあるにまかせて過てゆけ 又なき時はなきにまかせて とよみて送し返事に ある時はあるにまかせて過しかと 又無時はえこそまかせね/n4-61l
我世諦あかる雲雀のごとくにて あかる事こそ矢よりはやけれ/n4-62r