醒睡笑 巻3 文字知り顔
振舞ひなかばに、亭主、「塩打大豆(えんだだいづ)、塩打大豆」と呼びければ、塩打ち豆を持ちて出でけり。また一度呼ぶ時、「いや、無し」と申したれば、「不及力(ふきうりき)、不及力」とうなづきたり。
客(きやく)大きに感じ、家に帰りて人を請じ、次第を忘れ、始めに「不及力を出せ」と言ふ。塩打ち豆を出だせり。重ねて乞ふに、「もはや、無い」と答ふる。「塩打大豆、塩打大豆」と。
あとをさきへいらぬ文字あつかひや1)。
一 振舞なかばに亭主塩打大豆(えんただいつ)塩打大豆とよびけれ はしほふちまめをもちていでけり又一度よ ぶ時いやなしと申たれは不及力(ふきうりき)不及力とうな つきたり客(きやく)大に感し家に帰りて人を 請し次第をわすれ始に不及力を出せといふ/n3-4r
しほうちまめを出せりかさねてこふにもはや ないとこたふる塩打大豆塩打大豆と あとをさきへいらぬ文字あつかひや/n3-4l