醒睡笑 巻2 吝太郎(しはたらう)
ある芸者の親子、つれだちて貴人の前に侍りしが、子にて候ふ十四・五歳なる者、大名のおはしましあるまはりにありし脇差の熨斗付(のしつけ)を取て見、ひたもの褒めければ、親が言ひけるやう、「さやうにお腰の物などを、むざと褒めぬものぞよ。大名はひよくと下さるることがあるものじやに」と。
一 ある藝者の親子つれたちて貴人の前に 侍りしか子にて候十四五歳なる者大名の御 座あるまはりにありし脇指ののしつけを 取て見ひたものほめけれは親かいひけるやう さやうにおこしの物なとをむさとほめぬものぞ よ大名はひよくと下さるる事かある物しやにと/n2-43l