醒睡笑 巻1 鈍副子
「非体戒雷震(ひたいかいらいしん)」といふ観音経1)の文を、何としても忘るれば、師匠あまりのことに、弟子が額(ひたひ)をつかまへて、「ここのことを思ひ出でよ」と教ゆるに、また忘れて、おのが額をとらへ、「ここ戒雷震」と読みしこと、申しふりたる鈍副子(どんふうす)や。
一 非体戒雷震(ひたいかいらいしん)といふ観音経(くはんおんきやう)の文をなに としてもわするれは師匠あまりの事に 弟子がひたいをつかまへてここの事を思ひ 出よとをしゆるに又わすれてをのかひたいを/n1-50r
とらへここかいらいしんとよみし事申ふり たるどんふうすや/n1-50l