蒙求和歌
楊雄草玄
楊雄1)、漢代の人、字(あざな)、子雲といふ。文と酒を嗜みて、静かに世を渡りし人なり。
庭の通ひ路(ぢ)跡絶えて、門(かど)のほとりに人の来たること稀(まれ)らかなれども、書巻を開くとき、故人に向ふがごとし。蹲酒を汲むときに身の憂へなきがごとし。
後に太玄経を作りてけり。人、来たりて、これを見て、おほやけに申してけり。おほやけ、ことにもてあそび給ひけり。
水茎(みづぐき)の跡に昔を見るもなほ宿(やど)の人目とならずやはあらぬ
楊雄(イウ)草(サウ)玄(イヱム) 楊雄漢代ノ人アサナ子雲ト云文ト/酒ヲタシナミテシツカニヨヲワタリシ 人也ニハノカヨイチアトタヘテカトノホトリニ人ノキタル コトマレラカナレトモ書巻ヲヒラクトキ故人ニムカフカ/d2-5l
コトシ蹲(ソム)酒ヲクムトキニミノウレヱナキカコトシ後ニ大玄 経ヲツクリテケリ人キタリテ此ヲミテヲホヤケニ申テ ケリヲホヤケコトニモテアソヒ給ヒケリ ミツクキノアトニ昔ヲミルモナヲヤトノ人メトナラスヤハアラヌ/d2-6r