古本説話集
貧女盂蘭盆哥事
貧女、盂蘭盆の歌の事
今は昔、七月十五日、いみじう貧しかりける女の、親のためのことをえせで、薄色の衣(きぬ)の表(おもて)を解きて、缶(ほとぎ)に入れて、蓮の葉を上に覆いて、愛宕(おたぎ)にもて行きて、拝みて去りけるを、人の寄りて見ければ、蓮の葉に書きつけける、
たてまつる蓮(はちす)の上のつゆばかりこころざしをもみよの仏に
いまはむかし七月十五日いみしうまつし かりける女のをやのためのことをえせてうす いろのきぬのおもてをときてほときにいれて はすのはをうへにををいておたきにもてゆき ておかみてさりけるをひとのよりてみけ れははすのはにかきつけける たてまつるはちすのうへのつゆはかり/b103 e52
こころさしをもみよのほとけに/b104 e53