古本説話集
公任大納言1)
公任大納言
今は昔、四条大納言2)、三条の大殿(おほゐどの)3)に後れ給ひて、九月中の十日の月のいみじく明かかりける夜、更けゆく空を眺めて、
いにしへを恋ふる涙にくらされておぼろに見ゆる秋の夜の月
いまはむかし四条大納言三条の大ゐとのにをく れ給て九月なかの十日の月のいみしく あかかりける夜ふけゆくそらをなかめて いにしへをこふるなみたにくらされて おほろにみゆる秋のよの月/b102 e52