古本説話集
躬恒事
躬恒の事
今は昔、躬恒がもとへ、人の「来む」と言ひて、来ざりければ、またの夜、月の明かかりけるに、つかはしける、
てふらなる月もながめじもさなきにようべ来ぬこそしこらつらけれ
これも東人(あつまうど)の真似にや。
いまはむかしみつねかもとへひとのこむと いひてこさりけれはまたの夜月のあかか りけるにつかはしける てふらなる月もなかめしもさなきに ようへこぬこそしこらつらけれ これもあつまうとのまねにや/b71 e36