十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事
宇治入道殿に候ひける、「うれしさこそ」といふはした者を、顕輔卿1)、懸想しけるに、つれなかりければ、詠みてやりける、
われといへばつらくもあるかなうれしさは人にしたがふ名にこそありけれ
入道殿、聞かせ給ひて、「秀歌には返事なし。とく行け」とて遣はしける。
四十八宇治入道殿ニサフラヒケル、ウレシサコソト云ハシタモノヲ、
顕輔卿ケサウシケルニ、ツレナカリケレハ、ヨミテ遣ケル、
ワレトイヘハツラクモアルカナウレシサハ、人ニシタカフ名ニコソ有ケレ
入道殿キカセ給テ、秀哥ニハ返事ナシ、トクユケトテ
遣ケル、/k83