十訓抄 第六 忠直を存ずべき事
藤原相如は、粟田殿1)はかなくなり給ひにけるを歎きて、うち寝(ぬ)ることもせられざりければ、
夢ならでまたも会ふべき君ならば寝(ね)られぬいをも歎かざらまし
と詠みて、ほどなく失せにけり。
その娘なりけるが、父の別れを悲しみて、
夢見ずと歎きし君をほどもなくまたわが夢に見ぬぞ悲しき
十六藤原相如ハ粟田殿ハカナク成給ニケルヲ歎テ、ウチ
ヌル事モセラレサリケレハ、
夢ナラテ又モアフヘキ君ナラハ、ネラレヌヰヲモ
歎カサラマシ/k49
トヨミテ、程ナク失ニケリ、其娘ナリケルカ父ノワカレヲ
悲ミテ、
ユメミストナケキシ君ヲホトモナク、マタ我ユメニミ
ヌソカナシキ、/k50