昔、衰へたる家に、藤の花植ゑたる人ありけり。三月(やよひ)のつごもりに、その日雨そぼ降るに、人のもとへ折りて奉らすとて、詠める。
濡れつつぞしひて折りつる年の内に春は幾日(いくか)もあらじと思へば
むかしおとろへたるいへにふちの花 うへたるひとありけりやよひのつこもり にその日あめそほふるに人のもとへ おりてたてまつらすとてよめる ぬれつつそしゐておりつる年の内に はるはいくかもあらしとおもへは/s89l
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/89?ln=ja
【絵】/s90r