昔、男、津の国菟原(むばら)の郡(こほり)に通ひける女、「このたび行(い)きては、または来じ」と思へる気色(けしき)なれば、男、
葦辺(あしべ)より満ち来る潮のいや増しに君に心を思ひ増すかな
返し、
こもり江に思ふ心をいかでかは舟さす棹(さを)のさして知るべき
田舎人のことにては、良しや、悪しや。
むかし男つのくにむはらのこほりにかよ ひける女このたひいきては又はこじとお もへるけしきなれはおとこ あしへよりみちくるしほのいやましに/s45l
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/45?ln=ja
きみにこころをおもひますかな 返し こもり江に思ふこころをいかてかは 舟さすさほのさしてしるへき ゐなか人のことにてはよしやあしや/s46r