古今著聞集 魚虫禽獣第三十
後久我太政大臣1)家に、「おもなが」といふ鵯(ひよどり)のありけるを、家隆卿2)所望せられけるを、大臣(おとど)しばしつきみ給ひければ、詠みてつかはしける、
いかにせむ山鳥のおも長き夜を老いの寝覚めに恋ひつつぞ泣く
すなはち、使につけて送られけり。さだめて返しありけむかし。尋ねて記すべし。
後久我太政大臣家におもなかといふ鵯のありけるを 家隆卿所望せられけるをおととしはしつきみたま ひけれはよみてつかはしける いかにせむ山鳥のおも長夜を老のねさめに恋つつそなく すなはち使につけてをくられけりさためてかへしあり けむかしたつねてしるすへし/s549l