古今著聞集 草木第二十九
堀河院1)の御時、五月五日、江帥2)菖蒲を奉りたりける状に、
進上 水辺昌蒲
千年五月五日 大江為武
この状を殿上に出だされて、人々に、「読め」と仰せけれども、誰(たれ)もその心を知る人なかりけるに、師頼卿3)、その時弼少将とて候ひけるが、案じ得て、読み侍りける、
進(たてまつ)り上ぐる汀(みぎは)のあやめ草千年(ちとせ)のさつきいつかたえせん
堀河院御時五月五日江帥昌蒲をたてまつり たりける状に 進上 水辺昌蒲 千年五月五日 大江為武 此状を殿上に出されて人々によめと仰けれとも たれもその心をしる人なかりけるに師頼卿其時/s519r
弼少将とて候けるかあんし得てよみ侍ける たてまつりあくる汀のあやめ草千とせのさ月いつかたえせん/s519l