古今著聞集 飲食第二十八
俊頼朝臣1)、秋の末つかたに、田上(たなかみ)といふ所へまかりたりけるに、稲をかけ積みたるを、「あれは何といふ稲ぞ」とぞ問ひければ、「法師子の稲なり」と言ひける。
またあしたに、「昨日の法師子の稲にて2)した る御味噌水(みそうづ)」とて食はせたりければ、詠み侍りける、
昨日見し法師子の稲夜のほどにみそうづまでになりにけるかな
俊頼朝臣秋のすゑつかたにたなかみといふ所へまかり たりけるにいねをかけつみたるをあれはなにといふ いねそとそ問けれは法師子のいねなりといひ ける又あしたにきのふの法師子のいねかてした る御みそうつとてくはせたりけれはよみ侍ける 昨日みし法し子のいね夜の程にみそうつまてに成にける哉/s493l