古今著聞集 飲食第二十八
長谷の前々大僧正1)、五月五日人々に粽(ちまき)を配りけるに、俊恵法師聞きて、そのうちに入るべきよし、申しつかはすとて詠みける、
菖蒲(あやめ)をば2)ほかに借りても葺きつべし粽引くなるうちに入らばや
返し、僧正、
恥かしや院の菖蒲をおきながら粽引く名の空に立ちぬる
長谷前々大僧正五月五日人々にちまきをくはりけるに/s489r
俊恵法師ききてそのうちにいるへきよし申つかはすとて よみける あやめをほかにかりても葺つへしちまきひくなるうちにいらはや 返し 僧正 はつかしや院のあやめををきなからちまき引名の空にたちぬる/s489l