古今著聞集 変化第二十七
承平元年六月二十八日未刻に、衣冠着たる1)鬼の長(たけ)一丈余りなるが、弘徽殿の東欄のほとりに現じて、やがて失せにけり。あるいは夢想とも人申しけり。一定(いちぢやう)を知らず。
そのころ十ヶ日ばかり、暁に及びて、八省院と中務省の東の道との間に、人馬の声、東に向かひて多く聞こえけり。まことにはなかりけり。これも鬼のしわざにや。
承平元年六月廿八日未剋に衣冠着なる鬼の長 一丈あまりなるか弘徽殿の東欄のほとりに現してやか てうせにけり或は夢想とも人申けり一定をしらす 其比十ヶ日はかり暁にをよひて八省院と中務省/s468l
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の東の道とのあひたに人馬のこゑ東にむかひて おほくきこえけりまことにはなかりけりこれも鬼のしは さにや/s469r