古今著聞集 怪異第二十六
後朱雀院1)の代の末に除目行なはれけるに、大きなる人、赤き組(くみ)を首にかけて、四季の御屏風の上より見えける。
主上、御覧じて後、御心地例にたがはせ給ひて、いくほどなくて崩御ありけり。恐ろしかりけることなり。
世の人、「八幡2)の御体か」とぞ申しける。何のゆゑにてさは言ひけむ。おぼつかなきことなり。
後朱雀院の代のすゑに除目おこなはれけるに大なる 人あかきくみをくひにかけて四季の御屏風のうへより/s465r
見えける主上御覧してのち御心ち例にたかはせ給 ていく程なくて崩御ありけりおそろしかりける事也 世の人八幡の御体かとそ申けるなにの故にてさはいひ けむおほつかなき事なり/s465l