古今著聞集 興言利口第二十五
四条院1)崩御の時、醍醐の大僧正2)の弟子に、なにがし房とかやいひける僧、僧正3)のもとへ消息をやるとて、
去九日、国王俄死去云々。尤不便之事歟。(去る九日、国王俄に死去すと云々。尤も不便の事か。)
と書きたりける、不思議なる文章なりかし。
僧正、腹腸(はらわた)を切りて、その状を人に見せられけるとなむ。
四条院崩御の時醍醐大僧正の弟子になにかしは うとかやいひける僧今正のもとへ消息をやるとて 去九日国王俄死去云々尤不便之事歟と書たり けるふしきなる文章なりかし僧正腹腸を切て 其状を人に見せられけるとなむ/s449r