古今著聞集 哀傷第二十一
鳥羽院1)、かくれさせ給ひて御葬送の夜、西行法師、思はざるほどに高野より出でて、このことに参りあひて詠み侍りける、
今宵こそ思ひ知らるれ浅からず君に契りのある身なりけり
同じ夜、詠み侍りける、
道かはる御幸悲しき今宵かな限りの旅と見るにつけても
御送りの人々帰りけれども、一人残りゐて、明くるまで御墓に候ひて、とぶらひ参らせて、
問はばやと思ひよらでぞ歎かまし昔ながらのわが身なりせば
鳥羽院かくれさせ給て御葬送の夜西行法師思は さるほとに高野より出てこの事にまいりあひてよみ侍ける こよひこそ思ひしらるれあさからす君に契のある身なりけり おなじ夜よみ侍ける 道かはる御ゆきかなしきこよひ哉かきりの旅とみるにつけても 御送の人々帰けれともひとりのこりゐてあくるまて/s362l
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御墓に候てとふらひまいらせて とははやと思よらてそなけかまし昔なからの我身なりせは/s363r