古今著聞集 画図第十六
東大寺供養の時、鎌倉右大将1)上洛ありけるに、法皇2)より宝蔵の御絵どもを取り出だされて、「関東にはありがたくこそ侍らめ。見らるべき」よし、仰せつかはされたりけるを、幕下申されけるは、「君の御秘蔵候ふ御物に、いかでか頼朝が眼をあて候ふべき」とて、恐れをなして、一見もせで返上せられに3)ければ、法皇は、「さだめて興に入らずらん4)と思し召したりけるに、存外にぞ思し召されける。
東大寺供養の時鎌倉右大将上洛ありけるに法皇より 宝蔵の御絵ともを取出されて関東にはありかたくこそ/s301l
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侍らめ見らるへきよし仰つかはされたりけるを幕下 申されけるは君の御秘蔵候御物にいかてか頼朝か眼を あて候へきとて恐をなして一見もせて返上せられれ けれは法皇は定て興にいらんせらんと思食たり けるに存外にそ被思召ける/s302r