古今著聞集 和歌第六
河内重如1)をば山二郎判官代と申しけり。その品(しな)賤しき者なりけるが、われより高き女房を思ひかけて、艶書を手づから持て行きてんげり。
人づては散りもやすると思ふ間にわれが使にわれが来つるぞ
女めでてしたがひけり。この人、河内より夜ごとに住の江に行きて、夜を明かしけり。いみじき数寄者にてぞありける。
死ぬるとても歌を詠みてんげり。
たゆみなく心をかくる弥陀仏人やりならぬ誓ひたがふな
河内重如をは山二郎判官代と申けりそのしな賤もの也 けるかわれよりたかき女房を思かけて艶書をてつから持てゆきてんけり 人つてはちりもやするとおもふまにわれか使にわれかきつるそ 女めててしたかひけりこの人河内より夜ことに住のえにゆきて 夜をあかしけりいみしきすき物にてそありけるしぬるとても 哥をよみてんけり/s143l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/143
たゆみなく心をかくる弥陀仏人やりならぬちかひたかふな/s144r