古今著聞集 和歌第六
匡房卿1)若かりける時、蔵人にて内裏によろぼひ歩(あり)きけるを、さる博士なれば、女房たちあなづりて、御簾のきはに呼びて、「これ弾き給へ」とて、和琴を具し出だしたりければ、匡房詠みける、
逢坂の関のあなたもまた見ねばあづまのことは知られざりけり
女房達、返しえせでやみにけり。
匡房卿わかかりける時蔵人にて内裏によろほひありき けるをさる博士なれは女房たちあなつりて御簾のきはによひ てこれひき給へとて和琴をくしいたしたりけれは匡房よみける 会坂の関のあなたもまたみねはあつまのことはしられさりけり 女房達返しえせてやみにけり/s136l