古今著聞集 公事第四
建久のころ、中山太政入道殿1)、大納言にて、県召(あがためし)の除目に、三ヶ夜出仕せさせ給ひて、筥文(はこぶみ)の三の説を、夜ごとにかへて取らせ給ひけるを、人々めでたがり2)ののしりあへりけるに、頭中将忠季朝臣3)、あまりにいみじがりて、絵に描きて持たれたりけるとかや。中将はゆゆしき絵描きになん侍りける。
建久の比中山太政入道殿大納言にて県召 除目に三ヶ夜出仕せさせ給て筥文の三の説を夜こ とにかへてとらせ給けるを人々たかりののしりあへり けるに頭中将忠季朝臣あまりにいみしかりて絵に かきてもたれたりけるとかや中将はゆゆしきゑかきになん 侍ける/s85l