世継物語 ====== 第23話 一条院の御時后宮に清少納言とて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 今は昔、一条院の御時、后宮に清少納言とて、優(ゆふ)にいみじき物侍(さぶら)ひけり。 殿上より、梅の花散たる枝を、「これをいかが」と言ひたるに、ただ「早う落ちにけり」と答(いら)へたりければ、その詩を誦(ずん)じて、黒戸に殿上人多く居たりけるを、御門も聞こし召して、「歌など詠みたらんに勝りたる。よく答へたり」と仰せられけり。 ===== 翻刻 ===== 今は昔一条院御時后宮に清少納言とてゆふにいみしき 物侍ひけり殿上より梅の花散たる枝を是をいかかとい ひたるにたたはやうおちにけりといらへたりけれはその しをすんして黒戸に殿上人おほくゐたりけるを御門も 聞召て哥なとよみたらんにまさりたるよくいらへた りとおほせられけり/14オ