大和物語 ====== 第108段 南院の今君といふは右京の大夫宗于の君のむすめなり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 南院の今君といふは、右京の大夫(かみ)宗于((源宗于))の君のむすめなり。それ、太政大臣(おほきおとど)((藤原忠平))の内侍の督(かん)の君((藤原貴子。「督(かん)」は底本「かみ」、「かん歟」と傍書。))の御方にさぶらひけり。それを、兵衛の督の君((藤原師尹))、あや君と聞こえける時、曹司にしばしばおはしけり。 おはし絶えにければ、常夏((なでしこ))の枯れたるに付けて、かくなん、   かりそめに君がふしみし常夏のねもかれにしをいかで咲きけん となんありける((底本「ありけり」。文脈により訂正。))。 ===== 翻刻 ===== 南院のいまきみといふはう京のかみ むねゆきのきみのむすめなりそれ おほきおととのないしのかみ(かん歟)のきみの 御かたにさふらひけりそれをひやう ゑのかみ(ん)のきみあやきみ(師平公)ときこえける ときさうしにしはしはおはしけりおは したえにけれはとこなつのかれた るにつけてかくなん かりそめにきみかふしみしとこな つのねもかれにしをいかてさきけん/d10r となんありけり/d10l