大和物語 ====== 第71段 故式部卿宮失せ給ひける時は二月のつごもり花の盛りになんありける・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 故式部卿宮((宇多天皇皇子敦慶親王))失せ給ひける時は、二月(きさらぎ)のつごもり、花の盛りになんありける。 堤の中納言((藤原兼輔))の詠み給ひける。   咲きにほひ風待つほどの山桜人の世よりは久しかりけり 三条の右の大臣(おとど)((藤原定方))の御返し、   春々の花は散るとも咲きぬべしまた逢ひがたき人の世ぞ憂き ===== 翻刻 ===== 故式部卿宮うせ給けるときはきさらき のつこもり花のさかりになんありけるつ つみの中納言のよみ給ける さきにほひかせまつほとのやまさく らひとのよよりはひさしかりけり 三条の右のおととの御かへし はるはるの花はちるともさきぬへし 又あひかたき人のよそうき/d36l